空き家売却ガイド|共有名義
兄弟で共有している空き家・相続した実家の売り方

兄弟で相続した実家を、売るか残すかで意見が分かれる。連絡がとれない相続人がいる。共有名義の空き家には、ほかの空き家にない難しさがあります。共有のルールと、話し合いを前に進めるための考え方を説明します。
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最終更新日:2026年10月10日 / 監修:宅地建物取引士 シュース健人
共有のルール:売るには全員の同意が必要
共有している不動産について、民法は行為の種類ごとに必要な同意を定めています。
| 行為 | 例 | 必要な同意 |
|---|---|---|
| 保存行為 | 雨漏りの応急修理、不法占拠者への明け渡し請求 | 各共有者が単独でできる |
| 管理行為 | 短期の賃貸、リフォーム(形状・効用の著しい変更を伴わないもの) | 持分の価格の過半数 |
| 変更行為 | 家全体の売却、建物の解体、大規模な改築 | 共有者全員 |
家全体を売るのは変更行為にあたるため、共有者全員の同意が必要です。一方、自分の持分だけを売ることは単独でできます。ただし、持分だけを買う人は限られ、価格も大きく下がるのが一般的です。
遺産分割が終わっているかどうか

相続した直後で遺産分割協議が終わっていない状態(遺産共有)と、協議の結果として共有で登記した状態とでは、話し合いがまとまらないときの手続きが異なります。遺産分割前なら家庭裁判所の調停・審判、分割後の共有なら共有物分割請求の訴えが基本になります。
2023年4月の民法改正で、相続開始から10年を過ぎると、遺産分割で特別受益や寄与分を主張できなくなり、原則として法定相続分で分けることになりました。また、所在が分からない共有者がいる場合に、裁判所の手続きを経てその持分を取得したり、まとめて売却したりできる制度もできています。
こうした手続きの判断や、相続人間の交渉の代理は弁護士の業務です。当社は不動産の価格と売り方のご説明を担当します。
話し合いを前に進める4つの工夫
- 同じ資料を全員に渡す:査定額や相場の資料を一人だけが持っていると、疑念が生まれます。当社は相続人の皆さまに同じ内容の資料をお渡しします。
- 持ち続ける費用を数字で示す:固定資産税、保険、管理費を年額で出すと、「とりあえず残す」ことの負担が共有されます(維持費の計算)。
- 立て替えた費用を記録する:誰が何を払ったかを残しておくと、売却代金の精算がスムーズになります。
- 窓口役を決める:不動産会社とのやり取りは代表者一人に任せ、重要な判断は全員で行う、と決めておきます。
売却代金の分け方

共有で登記した不動産を売った場合、売却代金は原則として持分の割合で分けます。譲渡所得の税金も持分ごとに計算し、それぞれが確定申告をします。
相続空き家の3,000万円控除は、要件を満たせば相続人それぞれが使えます。ただし2024年1月以降の売却では、家屋と土地を取得した相続人が3人以上いる場合、1人あたりの控除額は2,000万円になります(3,000万円控除)。
一人の名義にまとめてから売り、代金を分ける方法をとる場合は、遺産分割協議書に「売却代金を分ける目的で代表者が相続する」旨を明記しておかないと、贈与とみなされるおそれがあります。具体的な書き方は司法書士・税理士にご確認ください。
相続人の中に認知症の方がいる場合
売買契約には、売主本人に判断能力(意思能力)があることが必要です。共有者の中に認知症などで判断能力が十分でない方がいる場合、家族が代わりに署名しても契約は有効になりません。
家庭裁判所で成年後見人を選んでもらい、後見人が売主の立場で手続きをすることになります。後見人の選任には数か月かかることがあるため、早めに準備を始めましょう。
共有のまま放置するとどうなるか
話し合いがつかないまま共有の空き家を放置すると、時間とともに解決が難しくなります。共有者の一人が亡くなると、その持分がさらにその相続人に分かれ、関係者が増えていきます。数十年たつと、顔も知らない親族が共有者になっていることもあります。
その間も、固定資産税は共有者の連帯納付義務とされ、市区町村からは代表者に納税通知書が届きます。誰が払うのか、立て替えた分をどう精算するのかで、新たな対立が生まれることもあります。建物の管理責任も共有者全員にあり、倒壊や落下物で他人に損害を与えれば、共有者が責任を問われる可能性があります。
「今は決められない」場合でも、少なくとも査定額と年間の維持費を全員で共有しておくことをおすすめします。数字がそろうと、話し合いの出発点ができます(維持費の計算)。
共有者の一人が住んでいる・使っている場合
共有者のうち一人が実家に住み続けている、あるいは物置として使っている、というケースもあります。共有者は持分に応じて共有物全体を使用できますが、2023年4月施行の改正民法では、共有物を使用する共有者は、別段の合意がない限り、他の共有者に対して自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負うことが明記されました。
住んでいる共有者がいる状態で家全体を売るには、その方の同意と退去が前提になります。住み続けたい共有者が他の共有者の持分を買い取る(代償を払う)方法もあり、その場合も適正な価格の目安として査定額が役立ちます。
立て替えた費用の精算の考え方
共有の空き家では、固定資産税や修繕費、草刈りの費用を、一人の共有者がまとめて立て替えていることがよくあります。民法では、共有物の管理の費用や負担は、各共有者が持分に応じて負担するとされています。
売却代金を分けるときに、立て替えた費用を差し引いて精算する方法が一般的です。そのためにも、領収書や振込の記録を残しておきましょう。精算方法について共有者間で合意できない場合の判断は、弁護士の領域になります。
持分だけを売るという選択
どうしても話し合いがまとまらない場合、自分の持分だけを売ることもできます。共有持分を扱う買取業者もありますが、価格は持分割合に応じた金額よりかなり低くなるのが一般的です。
また、買い取った業者が他の共有者に持分の買い取りや共有物分割を求めることがあり、家族関係に影響することもあります。選ぶ前に、ほかの方法がないか検討することをおすすめします。
よくあるご質問
兄弟の一人が売却に反対しています。
連絡がとれない相続人がいます。
共有者全員が契約の場に集まる必要がありますか?
このページの監修
シュース健人(宅地建物取引士 大阪府 第118737号/株式会社GEEZ 所属)
株式会社GEEZ所属。大阪・関西の相続、空き家、再建築不可、借地、工場・倉庫、長屋・文化住宅といった売却の難しい不動産の相談を担当しています。
本ページの数値は、国土交通省「不動産情報ライブラリ」、総務省「住宅・土地統計調査」、国土地理院、OpenStreetMap の公開データを当社が集計したものです。実際の金額は現地確認のうえでご提示します。
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